2020年09月10日
筋肉はどれぐらいで落ちる?維持する方法
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目次
1. 筋肉ってどのくらいのペースで減る?
2. 筋肉は取り戻せる?
3. そもそも筋肉を落とさないにはどうすればいい?
まとめ
1. 筋肉ってどのくらいのペースで減る?
筋肉ってどれぐらいのスピードで落ちてしまうのかご存知ですか?
実は、トレーニングをやめて、7日間ベッドに寝たきりの場合だと、筋肉量はかなり落ちるという研究があります(*1)。
では、もう少し日常的にアクティブな場合はどうでしょうか。
次の研究(*2)では、1年間以上のトレーニング歴のある20人の被験者を集めました。彼らにトレーニングをやめさせて、2週間経ったころの筋肉量を測りました。そうすると、2週間ではほとんど筋肉量の減りはみられませんでした。つまり、寝たきりではなく、普段から活動している分には、2週間ほどトレーニングをしなくてもそこまで筋肉量は減らないということです。
では、それ以上の時間、トレーニングをしなくなるとどうでしょうか。
実は、3週間経った頃から筋肉が減ってくると研究(*3)で示されています。
他にも、6週間トレーニングをしないと、筋肉をつけた分が42%も減った研究(*4)や、8週間トレーニングをしないと、筋肉をつけた分が50%も減ったという研究(*5)があります。後者の研究では、まず筋トレ初心者に、最初の8週間トレーニングをさせて、筋肉量を10%増加させました。そして、そのあとの8週間はトレーニングをしませんでした。そうしたところ、筋肉をつけた分が半減してしまいました。つまり、最初でつけた10%が半減されたので、5%の増加分だけしか残らなかったということです。この研究から読み取れるのは、8週間のオフで、身につけた分は半減してしまうのですが、半分は残るということです。このように、3週間で筋肉の減りが顕著になり、6週間、8週間と時間を重ねるごとにさらに筋肉は減ってきてしまうということです。ですが2ヶ月(8週間)ほど経っても、身に付けた分は半減されるぐらいのペースだということです。
まとめると以下のようなグラフになります。
トレーニングのオフをとるとしても、マックス3週間ほどにしておきたいところですね。しかし、普通にアクティブの生活を送れるのであれば、そこまで焦るほどでもないと思います。
2. 筋肉は取り戻せる?
筋トレやめると筋肉がすごく落ちちゃったように感じますよね。そうすると、今までの努力が無駄で、全然進んでないかのように感じて嫌になります。
しかし、筋肉が落ちちゃったからと言って、嘆く必要はありません。
筋肉が落ちちゃったと感じるそのほとんどの原因は、筋肉中のグリコーゲン(糖)や水がなくなってしまっているからです。体内では、グリコーゲン1gにつき、3gの水がくっついて存在しています。つまりグリコーゲンがない状態では、筋肉は水を失い、ハリ感がなくなるのです。それを証明するかのように、筋グリコーゲンは、筋肉のサイズを約16%も大きくするという研究(*6)があります。他にも、グリコーゲンがなくなったことで、筋肉(速筋繊維)のサイズが10日間で11%も減少するという研究(*7)もあります。これらの研究でわかるとおり、筋グリコーゲンはサイズに大きく関わります。つまり、最初の3週間までは、筋肉が落ちちゃったと思っているのは、筋グリコーゲンや水がなくなっちゃったと思っていただけたらと思います。
それにしても、3週間ほど経てば、全く落ちてないということもないでしょう。
しかし、ここで朗報なのは、筋肉はすぐに取り戻せるということです。それを証明するために、下の研究(*8)を見てください。
この研究では、①6週間トレーニングをして3週間のオフをとる繰り返しをしたグループ、②24週間トレーニングを継続させたグループを比較しています。その結果、①のグループはトレーニングをやめた途端、筋肉量は減少し、トレーニングを再開すると、また急上昇するのです。そして、そのサイクルを繰り返した24週間後には、②のずっとトレーニングをしてきたたグループと同じ筋肉量になっているのです。つまり、3週間のオフをとっても筋トレを再開すればしっかりと筋肉を取り戻せるのです。
何故、筋肉をすぐに取り戻せるのでしょうか。
それは、筋肉の記憶という略される『マッスルメモリー』が関係してきます。筋トレをして筋肉に刺激を与えると、筋繊維のまわりに浮遊している『サテライト細胞』というものが、筋繊維にくっつきます。こうしてサテライト細胞が合体されると、サテライト細胞の核が、もともとあった筋肉の中にのこります。その核は、筋肉の量が失われたとしても、筋肉中に残るのです。そうすると、またトレーニングを再開したとき、筋肉作りを簡単にしてくれます。つまり、筋トレをした分だけ、筋肉をつけやすい体にしているのです。
イメージは、下の図です。
サテライト細胞の核が、半永久的に筋肉に残ることはマウスの研究(*9)によってわかっています。しかし人間の場合の研究(*10)では、トレーニングを1年しなかった場合、核は元どおりに戻ってしまうという結果もでています。要するに、筋トレをした努力を筋肉は記憶してくれるが、全くしない状態を継続させてしまうのはよろしくないということです。
まとめると、
もし筋肉量が減ったように見えても、最初のうちは筋肉がグリコーゲンや水を失っているからです。3週間たった頃には筋肉量は少し減るかもしれませんが、マッスルメモリーのおかげで筋肉量はすぐ戻ります。そのため、筋トレで行った努力は水の泡になるわけではありません。筋トレをある期間しなかったからと言って、落ち込む必要はないのです。
3. そもそも筋肉を落とさないにはどうすればいい?
筋肉量を落とさないためにできることをご紹介します。
実は、自重トレーニングなどで少しでも刺激をいれるだけで、筋肉は十分維持されます。次の研究(*11)では、トレーニングのボリューム(重量✖️頻度✖️セット数)を1/9の量にしても、32週間は筋肉量が維持されたという驚きな結果がでています。ちょっとしたトレーニングだけで、7ヶ月ちょっとも筋肉量が維持されたのです。この結果は、若い人で見られたものでした。年寄りはこのトレーニング量では、筋肉量が少し減ってしまいました。そのため、60歳以上はトレーニングボリュームを落としすぎないのがいいでしょう。同じ研究で、トレーニングボリュームを1/3に落とした場合、若いグループで、筋肉量の維持だけではなく、筋肉量の増加も見られました。なので、筋肉量の維持をしつつ、ちょっと増やしたい場合は、トレーニングの量を1/3程度に落とすのがいいでしょう。目安は、1週間に1、2回自重トレーニングを行うことです。
どれぐらい食べるかも筋肉量の維持には大切です。
トレーニングをやめた被験者を、①カロリー制限、②カロリー維持、③カロリーオーバーのグループに分けて、筋肉量の変化をみた研究(*12)があります。
普通に考えると、カロリーが制限されれば筋肉量は落ち、カロリーが満たされていれば筋肉は作られます。たしかに、筋肉量が1番減ってしまったのは、①のカロリー制限をしていたグループでした。しかし面白かったのが、③カロリーオーバーしているグループは、体脂肪が増え、筋肉量の低下率が上がっていたということです。これは体脂肪がついたことで、エストロゲンの増加、テストステロンの増加、成長ホルモンの低下、インシュリンの感度が低くなったことなど様々な要員が考えられます。なので、筋肉をつくるためにカロリーはしっかりととる必要はありますが、筋トレをしていない場合は、カロリー維持を狙うべきだということです。
推奨されている体重維持をするカロリー(メンテナンスカロリー)を出すためには、体重をポンドに直して、15〜16かけた数字です。例えば自分だったら、70kg=154lbsだから、2310~2464kcalぐらいの数字になります。この数字をうまく活用するには、自分の実際の体重変化に合わせて微調整していくことをおすすめします。
タンパク質量も筋肉を構成する材料であるため、非常に重要です。
さきほど述べた①②③にグループ分けした研究で、筋肉をつくるための最適なタンパク質量が載っています。最適なタンパク質摂取量は、体重(kg)✖️1.6~2.2gです。例えば、70kgの人だったら、112~154gのタンパク質量をとった方がよいということになります。筋トレをしている人ほど、2.2gをかける方向性で考えたいです。一回に吸収できるタンパク質量はある程度決まっているため、しっかりと3〜5回の食事で、なるべく均等に分けて摂取していただきたいところです。
まとめると、
筋肉量維持のためには、最低限動くこと(週1、2回の自重トレーニング)、メンテナンスカロリーをとること、タンパク質を体重の1.6~2.2gとることが重要です。
まとめ
筋肉の落ちるペース、
2週間までは大丈夫で、3週間経つと落ち始めます。
筋肉を取り戻せるか、
そもそも落ちていると思っているのは、筋グリコーゲンや水がなくなってしまっている可能性が高いです。
マッスルメモリーによって、トレーニングを再開したら早く筋肉を戻せるので、今までの努力は無駄になりません。
筋肉を落とさないには、
自重トレーニングを週に1、2回いれるだけで十分です。
トレーニングボリューム(量)は1/9にしても維持はできますが、1/3にしたほうが少しの筋肉量増加は見込めます。
さらに食べる量は、カロリー維持にすることがベストです。体重(lbs)の15~16倍かけるとでてきます。
筋肉を落としたくなければ、タンパク質は体重(kg)の1.6〜2.2g摂取することがおすすめです。
筋肉の維持の仕方お分かりいただけたでしょうか。
筋トレをした分、しっかりと体に記憶されるって魅力的ではありませんか?
ご愛読いただきありがとうございました。
-廣田
参考文献
1.
One Week of Bed Rest Leads to Substantial Muscle Atrophy and Induces Whole-Body Insulin Resistance in the Absence of Skeletal Muscle Lipid Accumulation
2.
Resistance Training-Induced Elevations in Muscular Strength in Trained Men Are Maintained After 2 Weeks of Detraining and Not Differentially Affected by Whey Protein Supplementation
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28328712/
3.
Evidence-Based Resistance Training Recommendations
4.
Higher Training Frequency Is Important for Gaining Muscular Strength Under Volume-Matched Training
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30013480/
5.
Akt signalling through GSK-3beta, mTOR and Foxo1 is involved in human skeletal muscle hypertrophy and atrophy
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16916907/
6.
Glycogen concentration in human skeletal muscle: effect of prolonged insulin and glucose infusion
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10407928/
7.
Myostatin expression during human muscle hypertrophy and subsequent atrophy: Increased myostatin with detraining
8.
Effects of periodic and continued resistance training on muscle CSA and strength in previously untrained men
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21771261/
9.
Myonuclei acquired by overload exercise precede hypertrophy and are not lost on detraining
https://www.pnas.org/content/107/34/15111
10.
Muscle mass and strength gains following 6 months of resistance type exercise training are only partly preserved within one year with autonomous exercise continuation in older adults
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0531556518306673
11.
Exercise dosing to retain resistance training adaptations in young and older adults
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21131862/
12.
Nutritional strategies to counteract muscle atrophy caused by disuse and to improve recovery